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2024/05/17 07 : 50
CATEGORY : [メガミド文章]



大祭・御堂さんの誕生日を寝込んで過ごした雷知です。


それを鬱々と引きずるまま綴りたいと思います。


う・・・うぅ・・・ごめん、御堂さん・・・・。
まあいろんなところで祝われてるだろうけどなっ!!


※注意※
鬱。暗い。閉鎖的。ループ。
御堂さん記憶喪失。
眼鏡、健気でかわいそう。
嗜虐の果てエンド設定


以上、大丈夫な方、どうぞ。

そんな喜劇の物語







この部屋は舞台、台本はなくアドリブばかりのセリフ。
演技は必要ない、自然体それがみせものだから。
生まれては死ぬあなたと、何度もあなたを迎え、そして送る俺の。




そんな喜劇の物語






「おはようございます」


「・・・・」



覚醒して一番初めに見たものは壊れそうに優しい笑顔、そして悲しげな青い瞳。
ゆっくりと細められるそれを私はただ見ていた。柔らかに私の頬をなでる指。
知らない人間なのに不思議と恐怖は湧かなかった。いや、どこか、懐かしい。


誰なのか。


「朝です。ご飯できてますよ」

「・・・誰だ」

「ああ、忘れてた。俺は佐伯克哉と言います」


初めまして、御堂さん。彼、佐伯克哉はそう言った。
初めて会ったのだろうか。ではさっきの感覚は?私の勘違いだろうか。
その指も、声も、瞳も・・・どこかで見たことがある気がするのに。
彼に促され、食事の用意されているテーブルの前に座る。
その間も私は彼から目が離せなかった。


「今日はエッグベネディクトに挑戦したんですよ。」

「前食べたことあるって言ってたので作ってみたんです」

「御堂さん、半熟好きでしょう?ソース探すのに結構苦労したんです」


話しかけてくる彼はとても楽しそうだ。私はただ座って食べて聞いていた。
人形遊びだな、まるで。反応を示さない私に話しかけてどういうつもりだ。
サラダを食べながら目の前のそれをみる。相手のそれは私からしたら
少々茹ですぎに感じる黄色の黄身だった。私のそれはうっすらと赤くオレンジ
がかっていた。それを破るととろりとゆっくり黄身が流れ出る。
一口食べてみる。


「でもおいしくできているか・・・御堂さん、舌が肥えてるから」

「おいしい」


驚いた瞳がこちらを見る。
ああ、綺麗な氷の色だ。鋭くて冷たくて、なんて痛々しい。
そして笑っているのか泣いているのかわからない表情をするんだ。



「よかった・・・」




ゆったりと時間が流れる。
佐伯はそれから私にぴったりと寄り添って離れない。本を取りに行くときも、
飲み物を取りに行くときも、トイレの前にもついてきた。
そして優しく触れるのだ。壊れ物を扱うように。


「御堂さん・・・御堂さん」

「ん、なんだ・・・くすぐったい」


後ろから抱き締めて耳のそばを唇でくすぐってくる。
低く柔らかい声が心地いい。
男同士で何を馬鹿なことをと思うが、私にはそれがひどく安心し、満足していた。
窓から差し込む暖かい光に私はいつの間にかうとうととしていた。


「・・・・御堂さん、眠らないでください」

「っうわ!!どこを触って!!」

私の腹のあたりで組んでいた指を解き、内股へと滑ってきた。
そのまま上へと滑りベルトをはずす。そろりと下着の中の私を触る。
あいた口が塞がらなかった。佐伯がこんなことをするなんて。


「っ・・・さえ・・・!!」

「眠らないで下さいよ」


殴ってやろうと振り向く瞬間、怯えたせつない声が聞こえた。
抱き締める腕が強くて、震える声が切なくて君のフレグランスが懐かしくて。
もうどうでもよくなった。


「御堂さん・・・」

「はあ・・・ふっ、んく・・・」

本当に不思議なんだ。君のことは知らないはずなのにな。
君がいてくれることが嬉しいんだ。君がそばにいてくれることが。


「あ・・・・ぁあっ」

「御堂さん・・・愛してます」



ごめんなさい・・・・



「夜が来ますね」

「そうだな」


暗くなるにつれ、佐伯はさらに私にくっついてくる。
私を腕に抱いて頬を擦り寄せて話しかけてくる。
なぁ、君は何を抱えているんだろうな?なぜそんなに悲しそうに微笑むんだ。
どうして君は泣かないんだろう。泣けば、私も素直に慰められるというのに。
好きにさせるしか方法がないじゃないか。


「眠らないでください」

「ふ、ぁ・・・だが」

「俺が消えてしまう」


真剣にそんなことを紡ぐ。
君はここにいるのに、どこに消えてしまうというのだろう。
そばにいるじゃないか、君は私を抱きしめてくれているじゃないか。
君はここにいる。


「忘れないでくれ・・・」

「ずっとそばにいますから」

「忘れないでください」



眠らないで。

「・・・わかった、寝ない」

「・・・御堂さん」

寝させないようにしろ。
そう言うと佐伯は、またあの泣いているのか笑っているのかわからない
顔をする。どうしてそんな顔をするのか、私にはわからなかった。

「ありがとうございます」



それから話をたくさんした。うとうとしては佐伯が話しかけ、私をからかい、怒らせる。
「あんたの怒った顔は最高だ」なんて馬鹿なことをいう。
高慢な男の話、贖罪を続ける男の話など、いろいろ現実味のない話もした。


「眠らないでください」

「・・・・ん」

目の前がまっくらになり、必死に呼びかける佐伯の声は遠くなる。
私を抱きしめる腕は強くなっていくのに痛みも何も感じない。
唇に一瞬だけ熱が触れる。



「やっぱり、あなたは・・・俺を消すことを選んだ。あんたが眠らないといって
 眠らなかったことはなかった」


俺は暗い夜を独り怯えて過ごす。
明るい朝は希望の朝ではなく、絶望の朝だ。始めも終わりも、救いがない。
あなたは夜に死に、朝に生まれる。
俺の記憶を消して。




「・・・・っ誰だ」

「おはようございます」




はじめまして、御堂さん



またあなたと観客のいない演劇のやり直し。
終演(ハッピーエンド)のない俺とあなたの悲劇の舞台。


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2009/10/01 03 : 57
こめんと [ 0 ]とらっくばっく [ ]
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